「有事のドル買い」という言葉を耳にしたことがある人も多いと思います。これは、戦争などの不測の事態が発生した場合は、米ドルを購入しておけば損はない、という格言のようなものです。米ドルは基軸通貨であり、財界一の経済・軍事大国の通貨であるため、有事になると、政治的にはもちろん、軍事物資などの実需の面からも米ドルの価値が高まると考えられているのです。たとえば、一九九二年一月に湾岸戦争を引き起こす原因となった、イラクのクウェート侵攻の際の為替の動きをみてみましょう。イラク軍が侵攻したのは、一九九〇年八月二日の未明でした。それまでの為替相場は、一応急激に「円高・ドル安」に向かっていました。これは、アメリカの景気減速を背景に、日本とアメリカの金利差が急速に縮小したためで、八月一日には米ドルは、円やドイツ・マルクなどの上要な通貨に対して全面安となっていました。ところが、八月二日午前に、東京外国為替市場に「イラク、クウェートに侵攻」のニュースが伝わると、米ドルは一転して急騰を始めました。まさに、「有事はドル買い」の思惑から、それまで売られていた米ドルは買い戻されました。一方で円は、日本が石油需要のほぼ九〇%を輸入に頼っていることから、どんどん売られたのです。八月六日には円は、一米ドルで一九〇円台まで下落しました。しかし日がたつにつれて、中東情勢が長期化する憶測が流れると、米ドルを買う動きは慎重になりました。結局、イラク侵攻から約二週間後には再び「円高・ドル安」に変わり、円は一四七円台に回復、翌月の九月十日には一四〇円台を突破しました。アメリカはその後、政治・経済・軍事の中心となってイラク制裁のリーダーシップをとりましたが、中東情勢の膠着化か、為替市場の目を再び米景気の減速に向けさせたというわけです。是非とも外貨預金に挑戦するときには、以上の内容を参考にチャレンジしてみてほしい。